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米閣僚、ロシア企業から利益 「パラダイス文書」を入手

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インタビューに答えるロス米商務長官=5月18日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 米トランプ政権のウィルバー・ロス商務長官が、タックスヘイブン租税回避地)にある複数の法人を介して、ロシアのプーチン大統領に近いガス会社との取引で利益を得ていたことが、朝日新聞が提携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調べでわかった。ガス会社の主要株主には、プーチン氏の娘婿や、米国の制裁対象である実業家らが含まれている。商務長官は外国への制裁判断にも影響力を持ち、複数の専門家が「深刻な利益相反の恐れがある」と指摘している。
 英領バミューダ諸島などに拠点がある法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な電子ファイル「パラダイス文書」を元に、ICIJがロス氏の資産報告など複数の公文書と合わせて取材した。「ロシア疑惑」に揺れるトランプ政権にとって、新たな火種となることは必至だ。

 ロス氏は大富豪として知られる投資家だ。2月の商務長官就任時に、米国の法律に従い、保有資産を公開。職務と利益相反になりうるとして大半の資産を手放すことを宣誓し、米上院から承認された。

 しかし今回の取材で、タックスヘイブンである英領ケイマン諸島で、長官就任後も株を保有する複数の法人を通じて、海運会社「ナビゲーター」(ナビ社)と利害関係を保っていたことがわかった。ナビ社はロシアのガス石油化学会社「シバー」にガス輸送船を貸し出している。両社の取引が拡大すれば、ロス氏も利益を得る構図だった。

 シバー社はロシアの元国営企業で、プーチン氏の娘婿が取締役を務めるなど、同国政府と密接な関係にある。大株主の実業家も米国の制裁対象で、米国企業は取引が禁じられている。

 ICIJに対し、米商務省の報道官は「ロス長官は、ロシアなどへの米国の制裁政策を広く支えてきた。高い倫理基準を守っている」などと書面で回答した。(野上英文、高野遼、サーシャ・シャフキン(ICIJ)、マーサ・ハミルトン(ICIJ))

2017年11月6日03時00分    朝日新聞デジタル

 

 

最大流出元「ハッキング受けた」 パラダイス文書

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パラダイス文書の流出元である法律事務所「アップルビー」=10月10日、バミューダ諸島の中心都市ハミルトン、野上英文撮影

 パラダイス文書の内訳は、①大手法律事務所アップルビーの内部文書683万件②シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書56万6千件③バハマ、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件だ。
 最大の流出元となったアップルビーは、バミューダ諸島ケイマン諸島といったタックスヘイブン租税回避地)を中心に世界10カ所に拠点を構える。米国をはじめ世界の政治家や富豪、多国籍企業の依頼を受けて、ペーパーカンパニーなどを設立する。年1億ドル(約114億円)以上の収益がある。

 アップルビーはICIJの質問状に回答せず、代わりに10月下旬からホームページ上に相次いで声明を掲載した。要旨は次の通り。

 《我々の会社が情報を流出させたのではなく、違法なコンピューターハッキングを受けた。違法に入手された文書は、世界のジャーナリストによって使用されるだろうが、根拠のない主張に対して、会社と、正当で合法な事業を守る》

 《違法行為を容認していない。不正もない。

 無実の当事者が、データ保護の違反にさらされる可能性があることに失望している。ICIJの主張は根拠がなく、合法で合理的なタックスヘイブンの構造への理解が欠如している》

 またアップルビーから2016年に分社化したエステラ社は、ICIJの取材に対してアップルビーに質問するよう求めた。

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 パラダイス文書がどのようにリーク先の南ドイツ新聞にもたらされたかは明らかにされていない。ただ「どんな経緯で得られた情報であっても、公益にかなう限り報道は適法」という原則が、西側の主要国では認められてきた。各国の裁判所も、民主主義と報道の自由を重視する立場からこれを認めている。

 ベトナム戦争に関する米国防総省の極秘文書がスクープされた1971年の「ペンタゴン文書」では、米司法省が記事差し止めを申し立てたが、裁判所は政府側の主張を認めなかった。米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン氏が持ち出した米国家安全保障局(NSA)の機密情報を元にした2013年の英ガーディアン紙の報道についても、NSAの元法律顧問は「ひとたび記者の手に渡ったら、記者の権利は守られる」と言明したという。

 秘密文書を内部告発目的で持ち出し、記者にもたらす行為自体についても、違法性は阻却されるとの見方が近年は強まっている。

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〈国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)〉 米ワシントンに本拠を置く非営利の報道機関で、1997年から活動している。オーストラリアの新聞社幹部だったジェラード・ライル氏が事務局のスタッフ20人を率いる。約70カ国のジャーナリストがメンバーで、国境を越える社会問題を共同で取材する。今年5月にはパナマ文書の報道でピュリツァー賞を受賞。朝日新聞社は12年から、国内の報道機関として最初に提携している。

 米商務長官をめぐる取材はサーシャ・シャフキン、マーサ・ハミルトンの両記者が担当。カナダ首相の腹心をめぐる取材はライアン・シトゥム記者、カナダCBC放送のハービー・キャショア記者が担当した。

2017年11月6日03時00分    朝日新聞デジタル