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政府、平和賞にコメント出さず 外務省幹部「立場違う」

 日本政府は、核兵器禁止条約採択に貢献した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞の報を複雑な思いで受け止めている。核廃絶へ向けた意義を認める一方、核・ミサイルの脅威を高める北朝鮮に触れ「遠く離れた国と、現実の脅威と向き合っている我々とでは立場が違う」ととまどいを見せる外務省幹部も。首相官邸と同省は受賞決定を受けてのコメントを出さなかった。
 核禁条約をめぐって、日本政府は「核兵器廃絶という目的は同じだが、アプローチが異なる」と不参加の立場をとってきた。同条約には核保有国が参加しておらず、非核保有国との間で溝を生じさせる原因になっているとの理由からだ。

 安倍晋三首相は8月9日、原爆が投下された長崎市内で被爆者団体と面会後、記者団に核禁条約に参加しないことを問われ、「核兵器国と非核兵器国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現をかえって遠ざける結果となってはならない」と強調した。

 慎重姿勢をとる背景には、米国の「核の傘」に頼っている現状がある。北朝鮮はこの夏、2度にわたる日本上空越えの弾道ミサイル発射と6度目の核実験を強行。首相は北朝鮮情勢を「国難」と位置づけて9月に衆院を解散し、事実上の選挙戦を展開している。

 安倍政権は日米同盟を外交・安全保障政策の基軸に据え、抑止力の強化をはかる。河野太郎外相は個人のメールマガジン9月号で「米国と日本を含む米国の同盟国は、アジアであれば北朝鮮あるいは中国、欧州であればロシアが核兵器を放棄する前に核兵器を禁止することは、抑止力に問題が出ると考えている」と核禁条約に距離をおく理由を説明した。

 一方、共産党志位和夫委員長は6日、「ICANが広島、長崎の被爆者はじめ市民社会全体と共に進めた活動が評価された。この機会に、禁止条約に日本政府が調印することを重ねて強く求める」とのコメントを発表した。

 核禁条約は9月に50カ国以上が署名し、早ければ来年中の発効が見込まれる。ICANの受賞は、核禁条約を政治的に後押しする可能性があるが、日本政府は不参加の立場を変えない見通しだ。

 ただ、核兵器廃絶に向けた道筋は一様ではない。2015年、イランが核開発を制限する見返りに経済制裁を解除する合意を米国などとともに結んだ欧州には、北朝鮮問題でも同様のアプローチが有効との主張がある。今回の受賞で北朝鮮との「対話」を促す機運が高まれば、圧力以外の選択肢を求める声が強まる可能性もある。(小野甲太郎、松井望美)

2017年10月6日21時52分    朝日新聞デジタル