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米朝、危うい挑発合戦 正恩氏「大統領と対等」誇示

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 【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)委員長は、トランプ米大統領を名指しで非難する異例の声明を発表した。「北朝鮮を完全に破壊する」と国連総会で演説したトランプ氏に「自分のすべてをかけて対価を払わせる」と警告。自らを米大統領と「対等」な存在と印象付け、核保有国として米国を交渉の場に引きずり出す布石とみられる。米朝の最高指導者による挑発は危うい空気を帯びつつある。
 北朝鮮の最高指導者が自ら声明を出すのは、祖父の金日成(キム・イルソン)氏、父の金正日キム・ジョンイル)氏(いずれも故人)と「3代続く政権でも初めて」(韓国統一省)だ。

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声明を発表する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が22日配信=ロイター

 声明は朝鮮労働党機関紙、労働新聞の1面(22日付)で金正恩氏の写真をつけて掲載された。金正恩氏は3大権力機関の朝鮮労働党朝鮮人民軍、政府にあたる国務委員会のそれぞれのトップだが、声明は国務委員長名義で出された。政府代表としてトランプ氏と対等に渡り合う姿を誇示し、国内の求心力を高める狙いも透ける。

 トランプ氏は19日、国連総会で北朝鮮の体制批判にとどまらず、自国や同盟国の防衛で必要となれば「完全破壊する」と発言した。この発言が正恩氏に核・ミサイル開発を加速させる格好の名分を与えた面もある。声明では「トランプが世界の面前で我が共和国をなくすと宣戦布告した以上、我々も相応の史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と、自らを正当化した。

 「超強硬対応措置」は何を指すのか。過去最大の水爆実験を太平洋上で実行する――。国連総会に参加するためニューヨークに滞在中の李容浩(リ・ヨンホ)外相は21日にこう明言した。中国は1960年代、米ソの反対を押し切って核実験を実行、核保有国の地位を認めさせた。この例を参考にした可能性もある。

 今回の北朝鮮危機は3月6日、弾道ミサイル4発を日本海に向け同時に発射したうえで「在日米軍を標的にした演習」と表明したことを契機に始まった。米政権は4月、自国民に化学兵器を使ったシリア政権軍や、アフガンの過激派組織「イスラム国」(IS)の地下施設をミサイルで攻撃。実力行使をためらわない姿勢を北朝鮮に示し、米空母や原子力潜水艦朝鮮半島近海に派遣した。

 北朝鮮は7月に2度、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイルICBM)級の「火星14」を発射。9月3日には過去最大の核実験(6回目)を強行した。正恩氏は15日の中距離弾道ミサイル「火星12」の発射後には、核開発が「ほぼ終着点にある」と語った。その直後の19日、トランプ氏は正恩氏を「ロケットマン」とからかった。

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トランプ大統領は金委員長を「ロケットマン」とからかった=ロイター

 国連はこの間、追加の制裁決議を2度採択。9月には石油関連の供給制限に踏み出した。

 北朝鮮に残された課題はICBMを完成させ、小型化された核弾頭を搭載して対米戦略兵器として配備することだ。李外相の発言通りであれば、太平洋上での水爆実験は核・ミサイル開発の総仕上げともいえる。

 北朝鮮にとって核・ミサイルは、核保有国になるために必ず完成させる国家目標だ。韓国の専門家の間では「北朝鮮が年内に核・ミサイル開発を終え、来年から核保有国として、米国に平和協定締結を迫る」との見方が出ている。

 一方、米国を射程に入れるICBMの完成は米政権の「レッドライン(譲れない一線)」を踏み越える。米政権は韓国に戦術核を再配備するなどの対抗措置に出る可能性がある。トランプ氏は22日につぶやいた。「明らかに狂った金正恩は、かつてないやり方で試されることになる」

2017/9/23 0:48    日経新聞