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餅まき「年配者の方がすごい」壮絶な現場 顔から流血も

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弘法大師の生誕を祝う「青葉まつり」でもフィナーレは餅まき=6月15日、和歌山県高野町、金居達朗撮影

■「まだまだ勝手に関西遺産」

 和歌山県民は、いつでも、どこでも、餅をまく。例えば、祭り、学校行事、集会。その数は、県内で年に数百回とも、千回に及ぶとも言われる。日時や場所が書き込まれた「餅まきカレンダー」もあるほどだ。
 「投げてー」「こっちもほってー」「痛たた」

 6月15日、和歌山県高野町の金剛峰寺(こんごうぶじ)。弘法大師の生誕を祝う青葉まつりのフィナーレが、餅まきだ。駐車場に設けられた舞台から、約140キロ分の餅が次々に降り注ぐ。

 幼子の手を引いた女性や、地元の学生、杖を片手にしたお年寄りら大勢の老若男女が集まっていた。町立高野山中学校の生徒たちは「年配者の方が僕らよりすごい」と口をそろえる。「下に落ちた餅を拾おうとしたら、横から取られた」。餅まきで人生の厳しさを学んでいるようだ。

 スペインから来たエレナ・ヘレーロさん(32)は「何人かとぶつかったけど、楽しくて興味深い」。初来日で、日本語は話せない。でも、餅まきなら、見よう見まねでできる。

 一般的には、餅まきは家の棟上げで行われる。だが、和歌山ではあらゆる機会に餅をまく。5月の憲法記念日の集会で弁護士らが和歌山城で餅をまき、紀州鉄道の車両の引退セレモニーで、乗車した高校生が窓から餅をまいた。県北部の紀の川市ではパラグライダーからパラシュート付きの餅をまき、県南部の田辺市龍神村では夜、暗闇の中で餅をまく。餅に蛍光テープを貼り、その名も「夜のホっタルもちまき」。飛び交う餅が蛍のように見えるらしい。

 餅の種類もさまざまだ。神社の櫓(やぐら)から畳1畳サイズの餅が落ちてきて、みんなでちぎり合うケースもある。餅の代わりに、鯛(たい)やパン、タワシが宙を舞う地域も。餅を受けやすい専用エプロンまである。

 「餅まきカレンダー」をつくった県情報政策課の林清仁(きよひと)さん(56)によれば、餅まきの盛んな理由について、「高野山熊野三山など神仏を大事にする土地柄も関係しているのでは」とみる。「和歌山人は餅まきが人生に密着している」と指摘。子どものころに餅まきデビューし、学生時代は学園祭、社会人となれば結婚、マイホームと、人生の折々に餅まきが刷り込まれるようだ。

 年齢を重ねても、取った餅の数を周りの人と競い合っている。海南市の小西康喜(やすき)さん(49)も毎年5月、地元の餅まきに参加するが、今年は顔から流血しながらも3個半取った。ここの餅まきは約1時間半、直径約50センチの大餅も舞う。「前はまぶたを切って3針縫った。1個も拾えんようなったら僕も引退や」

 押し合いへし合いの激しい餅まきだが、持ちつ持たれつの助け合いの産物でもある。餅を用意する人、まく人、櫓を立てる人……。大勢の人出と住民の絆が必要なのだ。

 餅まきは、一日にしてならずだ。(土井恵里奈)

だんじりに負けない熱さ

 《ミュージシャン・ウインズ平阪さん(58)の話》 実家が米屋だったこともあり、子どものころから餅まきに親しんできました。毎年初午(はつうま)の日、店の前の軽トラから餅をまきました。取り合うおばちゃんらの形相は怖いですよ。和歌山は普段は大阪の陰になりがちで、「岡山?」と聞き返されるほど目立たない県ですが、餅まきに関しては大阪・岸和田のだんじりに負けない熱さ。大餅を取ったら、八岐大蛇(やまたのおろち)をしとめた感覚で盛り上がります。

2017年7月12日13時01分    朝日新聞デジタル