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「米国第一」G20翻弄 密室会合、成果見えず

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会談する米トランプ大統領とロシアのプーチン大統領(7日、ドイツ・ハンブルク)=AP

 【ハンブルク=川合智之】トランプ米大統領が20カ国・地域(G20)首脳会議で異質な存在感を放った。貿易や地球温暖化で独自の主張を貫き、周囲の説得にはほとんど耳を貸さない。多国間で一致点を見いだす国際会議への関心は薄く、代わりに個別の首脳会談を重視する。個別交渉で不動産業界を渡り歩いてきたトランプ氏ならではだが、米国が主軸を担ってきた首脳会議や国際枠組みの多くは漂流の危機にさらされる。
 今回のトランプ氏訪欧の目玉は、ロシアのプーチン大統領との初会談。予定の4倍の2時間15分という異例の長丁場になった。米CNNテレビによると、米政府高官がトランプ氏に渡した分厚い訪欧資料のうち、プーチン氏との会談の部分はわずか数ページ。何を話すかはトランプ氏任せだった。

 ティラーソン米国務長官米大統領選へのサイバー攻撃についてトランプ氏が懸念を伝え、プーチン氏が関与を否定したと説明した。与党・共和党の中でも対ロ強硬論が根強いことを受けた発言だ。両氏はサイバー攻撃による介入を防ぐ作業部会の設置で合意し、この問題の幕引きとしたい意向がにじむ。

 トランプ氏は、同席者をティラーソン氏と通訳だけに絞り、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)やホワイトハウスのロシア担当者は排除した。米メディアによると、人数制限の理由は「情報漏れを防ぐため」。マクマスター氏は安保政策の責任者だが、ロシアに批判的な発言をしたことがある。

 長時間の密室会合で、実際にはどんな話をしたのかは不明な部分が多い。情報発信をコントロールし、異なる見解が出てきても「偽ニュースだ」と反論するのがトランプ政権の常とう手段。このやり方は、多数の関係者と意見を調整する国際会議とは相性が悪い。

 「極めて生産的な経済会合だった。極めて重要な問題を協議した。北朝鮮問題もかなり議論した」。ムニューシン米財務長官が7日の記者会見で説明したG20首脳会議初日の中身はこれだけだった。「米国が第一だが孤立ではない」とムニューシン氏は弁明したが、漏れてくるのは他の国との対立ばかりだ。

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 「多くの作業が残っている」。メルケル独首相はG20初日を終え、首脳宣言のとりまとめの難しさを訴えた。障害は米国だ。ロシアのオレシキン経済発展相は「19カ国が自由貿易について話した」と話し、米国との間に「不協和音があった」と認めた。

 トランプ氏は地球温暖化に関する討議も、ロシアのプーチン大統領と会談するため、冒頭発言だけで退席した。他の19カ国はトランプ氏が離脱を宣言した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の重要性を主張した。米メディアによると、米政府当局者は化石燃料の効率利用を米国が支援すると提案したが、マクロン仏大統領が批判した。

 G20冒頭の写真撮影会で、トランプ氏は各国首脳の端で所在なげに立っていた。在任年数順に並ぶ外交慣習に沿った形ではあったが、その後の討議での対立を象徴するような立ち位置にみえた。

 米国が砂をかけたのはG20だけではない。5月の北大西洋条約機構NATO)首脳会議では、有事の際に加盟国を防衛する集団的自衛権への支持をトランプ氏は表明せず、疑心暗鬼が広がった。加盟国のほとんどが「国内総生産(GDP)比2%超」という国防費目標を達成していないためだ。目標達成国5カ国の1つ、ポーランドを訪れたトランプ氏は6日「防衛の責務を果たす」と明言し、扱いに差を付けた。

 2017/7/8 20:46    日本経済新聞 電子版