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NHKがネット受信料検討 答申案、TVなし世帯も対象

 NHKの受信料制度等検討委員会(座長・安藤英義専修大学大学院教授)は27日、NHKに対して新たな受信料を設ける答申案を示した。テレビ放送をスマートフォンスマホ)などに同時に流す「常時同時配信」について、テレビを持たない世帯も対象とした。スマホなどが放送の新たな基盤になりつつあることに対応した動きだが、民放各社などの反発も多く、議論を呼びそうだ。

 東京五輪の前年の2019年にNHK番組のネット同時配信が実現した場合を見据え、NHKは2月、検討委を立ち上げた。検討委は27日、「常時同時配信の負担のあり方」についての答申案をまとめた。NHKはこれを受けて28日から2週間、パブリックコメントを募集し、7月末に検討委が意見をまとめる。その後、NHKとしての意見を決定する方針だ。

 答申案はスマホなどで番組を見られるようにした場合、受信料を徴収するとした。視聴用のアプリのインストールや、視聴のためのID登録などを検討。スマホやパソコンを所有しているだけでは受信料徴収の対象にはならない。テレビを所有し、すでに受信料契約を結んでいる世帯に対しては、2台目、3台目のテレビと同様に追加徴収はしない方針を示した。

 料金については、現在の地上波放送と同程度が望ましいとした。

 新たに受信料徴収の対象となる可能性があるテレビを持たない世帯は総世帯数の約5%に相当する。答申では、移行期間に対する暫定措置などについても、NHKに検討を求めた。

 現在のNHK受信料はテレビを持つ世帯が払っている。ネット同時配信はIT(情報技術)化進展の流れを受けて収益拡大を見込んだ戦略だ。テレビを持たない若い人などにも徴収対象を広げる。ただ、課題も多い。

 一つが民放各社との考え方の違いだ。受信料という大きな収入源があるNHKに比べ、地方局も含めた民放は経営の規模や状況の格差が大きい。

 地方局ではネットでの配信の設備投資負担に耐えられないという意見も多く、総務省の検討会で日本民間放送連盟が「国民的な議論が不十分で拙速な制度改正は避けるべきだ」との意見を出した。民放連の井上弘会長(TBSテレビ名誉会長)が「これを機会にますますNHKが大きくなるのはいかがなものか」と懸念を示したこともある。

 政府もNHKの先行に懸念を示す。NHKが16年11~12月に実施したネット同時配信の試験提供では利用率は6%にとどまった。その結果を受け、5月の総務省の検討会で高市早苗総務相は「市場ニーズを裏付ける結果になっているとは言いがたい」と発言した。

 同時配信が放送の付加サービスなのか、放送と並ぶサービスなのか、NHKのなかでまだ議論が尽くされていない点も政府内で疑問視されている。高市総務相は「補完的サービスなのか、今後の柱となるのか、整理が必要だ」と注文を出した。

 利用者の利便性の議論も置き去りだ。NHKだけが先行してネット配信を始めても、他のチャンネルと見比べるといったテレビと同様の試聴スタイルは実現できない。総務省の検討会の委員の一人は「民放も同時にやらないと若い人は使わないだろう」と指摘する。

 子会社の不正経理や外部委託した受信料徴収での不正など、NHK内の問題も多い。徴収対象の拡大に国民の理解を得るには、経営体質の改善も待ったなしになる。

2017/6/27 23:07    日経新聞