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アマゾンの荷物、一般人が運ぶ時代

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 アマゾンジャパン(東京・目黒)が日本国内で独自に配送網を構築することになった。アマゾンは個人事業者を活用し、宅配便首位ヤマト運輸を事実上中抜きする。実は親会社の米アマゾン・ドット・コムの目線はもっと先にある。究極の姿は、時間のある一般人に委託したり、ロボットを使ったりする手法だ。アマゾンが世界の物流のあり方を変えようとするなか、欧米企業も対応を進めている。

丸和運輸機関は株価急騰、次の候補探しも

 アマゾンが東京都の都心部で組むパートナーが丸和運輸機関。アマゾンの当日配送を担い、2020年度までに軽貨物車1万台、運転手1万人の体制を築くという。22日の東京株式市場では丸和運輸機関の株価が一時、前日比17%高まで急騰して年初来高値を更新した。総投資額100億円超は自社で負担する見込みだが、アマゾンと組むことで収益が拡大するとの期待が広がった。

 アマゾンジャパンの最大の配送の委託先であるヤマトは、アマゾンとの取引の撤退も視野に取り扱いを縮小する方針だ。社会でIT(情報技術)活用が広がっても、最後に家庭やオフィスに荷物を届ける「ラスト・ワン・マイル」は人の手に頼るのが現状だ。「アマゾン対ヤマト」の裏で、漁夫の利を狙う企業も出てくる。

 株式市場では「第二の丸和運輸」を探す動きが始まった。東証マザーズ上場の物流中堅、ファイズも一時9%高となった。同社はもともとアマゾンとの取引が大きいことも影響したようだ。

 アマゾンは日本以外でドイツポスト傘下のDHLなどと取引するが、直接運送事業者を活用する例はある。米国や英国、ドイツなどではウェブサイトを通じ事業者を募集。日本でも東京23区や大阪市で募っている。一定の従業員や配送車を保有する事業者であれば応募でき、審査を通ればアマゾンと業務委託契約を結ぶことになる。ヤマトや日本郵便の条件が悪ければ、従来は大手かの下請けだった企業と直接組む手がある。

■一般人が荷物を運ぶ時代

 だがアマゾンの目線はさらに先、一般人が配送する時代に向いている。アマゾンは米国で2015年から、「アマゾンフレックス」と呼ぶ個人に宅配を委託する事業を始めた。「物流版ウーバー」ともいえるサービスで、時給18~25ドル(約2000~2800円)で個人に荷物を配ってもらう。時間のある学生らが専用のスマートフォンアプリを使って仕事を請け負い、空いた時間に好きなだけ働くことができる。

 アマゾンフレックスはすでにニューヨークやボストン、フィラデルフィアなど8都市で展開。今後はシカゴやデトロイトなど計30都市に広げる予定だ。プロだけが荷物を届ける時代はすでに終わっている。

 類似のサービスはスウェーデンなど欧州でもスタートアップ企業が手がけてきた。学生や主婦らが日常的に移動する圏内で、空いている時間に相対で配送の取引をする。

 アマゾンが一般人の配送と同時に進めるのがドローンの研究だ。ドローンなら物流センターから直接家庭までつなぐことも可能。英国で昨年始めたドローンの自動配達試験「アマゾン・プライム・エアー」は、小型の荷物を30分圏内で運ぶ。実験結果次第では本格展開に乗り出す見通しだ。

 アマゾンは無人自動車の技術の研究もしているもよう。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4月、アマゾンが研究チームをひそかに組織していたと報じた。

■欧米企業、ドローン、無人運転対応急ぐ

 欧米ではアマゾンのドローン、無人運転車による配送を見込んだ対応も進む。DHLは自らドローン配送の実証に乗り出している。親会社のドイツポストのフランク・アペル社長は「アマゾンは重要な顧客だが、将来の物流のあり方を巡っては、我々も先頭であり続ける必要がある」と述べる。

 商用車世界首位の独ダイムラーは自社で開発する自動運転トラックと、提携先のスタートアップが手がける小型配送ロボットやドローンを組み合わせた配送を提案する。アマゾンが開く「物流新時代」にインフラを提供できる体制を築けなければ、アマゾンの中抜き対象になるとの危機感がある。

 日本政府は先日まとめた「未来投資戦略2017」で「移動革命」を重点項目の一つに挙げた。だが一般人による配送などの言及はなし。その間にも、アマゾンを起点に欧米企業はデジタル技術を使ったサービスの変革を進める。サービス業を中心とした人手不足、少子高齢化など「課題先進国」と呼ばれる日本だが、歩みはまだ遅いようだ。

(加藤貴行、栗原健太

2017/6/22 11:58    日本経済新聞 電子版