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「豊漁」と驚いていたら…マグロの幼魚取り過ぎ

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長崎魚市場に入荷された太平洋クロマグロの幼魚

 資源が減少している太平洋クロマグロの幼魚(30キロ・グラム未満)の漁獲規制を巡り、長崎県内の今漁期(2016年7月~17年6月)の漁獲量が、県に割り当てられている632・3トンの枠を50トン以上超過していることが分かった。

 取り過ぎた分は次の漁期分から差し引かれる見通しで、影響が懸念されている。

 県漁業振興課によると、県内では対馬壱岐、五島、県北、県南の5海区に分けて目標数量を定め、漁獲量を管理している。昨夏、対馬の北の海域では大きめのヨコワ(マグロの幼魚)が大量に水揚げされた。漁師からは「今までにない豊漁」と驚きの声が上がり、対馬海区の漁獲枠は9月までに9割近くが埋まった。

 魚群は南下し、壱岐、五島、県北海区でも漁獲量が急増。県は枠の95%を消化した海区に操業を自粛するよう要請したが、3月6日には県全体の漁獲量は632・3トンの枠を超えた。

 5海区のうち、漁獲枠を超えた五島、県北海区は、魚の通り道に網を仕掛ける定置網漁が盛んだ。県北海区の生月漁協(平戸市)では1~3月、定置網に数百匹のヨコワがひしめき、大部分が水揚げされた。

 同漁協の幹部は、「タモ網ですくって外に出せる量ではなかった。逃がすには網を全開にして、他の魚も全て放つしかない状態だった」と釈明する。3月上旬に1週間、漁を自粛したが、県北海区の漁獲量は枠の2倍以上に達した。

 水産庁は、各県の超過分を次の漁期の漁獲枠から差し引く方針を示している。各海区の削減量は県が割り振るが、超過分をそのまま引くと五島海区は約30%減、県北海区は取れなくなる。県の担当者は「普通に考えれば取り過ぎた漁業者が負担すべきだが、全く取れない海区が出てしまう。どのように対処すればよいのか……」と頭を悩ませる。

 ◆「実態に合った制度に」

 定置網の漁獲が、他の漁を圧迫する事態も生じている。一本釣りが盛んな壱岐海区では、定置網で太平洋クロマグロの幼魚が大量に取れたため、一本釣りの漁師の多くが漁をできなかった。箱崎漁協(壱岐市)の担当者は「目の前で群れをなしているヨコワを釣れず、人によっては数十万円の収入が失われた。生活に影響が出かねない」と訴える。

 漁業は自然を相手にするため漁獲量は常に不安定で、年によって変動が大きいという問題もある。太平洋クロマグロの幼魚の県内での漁獲量は、年間300~1600トンの幅があり、前期は約300トンにとどまった。県内の漁業者からは「地域の漁業の実態に合った制度にしてほしい」との意見も聞かれる。

 国全体の今漁期の漁獲量はすでに上限(4007トン)を超えており、今月末までは全国で原則禁漁となっている。昨年は、承認を受けていない漁師が水揚げするなどの違反が長崎県三重県などで確認された。

 水産庁資源管理推進室は「漁獲規制は国際的な約束事であり、現場には知恵を絞って守ってほしい。守れなければ発言力がなくなり、他国の漁獲量が伸びた場合に抑制できなくなる。結果的に国内の漁業者を苦しめることになる」と理解を求めている。(坂田元司)

2017年06月18日 11時01分    Copyright © The Yomiuri Shimbun