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人気「傾いたラーメン店」移転へ…愛され35年

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 地盤沈下の影響で建物が傾いた「まる豊」の店舗(和歌山市有本で)

 ラーメン激戦区といわれる和歌山市で、「店が傾いている」と話題となって人気の店がある。

 地盤沈下の影響で建物全体が傾いたため、カウンターにも傾斜がついており、「ツツツ……と、ビール瓶が隣の席から滑ってきた」という冗談のような話も。来月、別の場所に移転すると聞き、創業35年の「まる豊」(和歌山市有本)を訪ねてみた。

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丼が滑り落ちないよう設置されている盆

 繁華街から車で5分ほどの県道沿い。木造平屋の店舗正面に立つと、明らかに左が下がっている。8畳にも満たない店内に入ると斜めになったカウンターが目に飛び込んできて、一瞬、平衡感覚を失ってしまう。

 30年来の常連という男性会社員(57)が「丼を手でずっと押さえているので、最初はスープを飲むのに苦労した」と楽しそうに笑った。

 同店は三重県出身の豊田二郎さん(79)が「脱サラ」して和歌山に移住して、1982年に開店した。元々は戦後間もなく建てられた小屋。傷みもあったが、競輪場の近くで集客が見込めることなどから借りたという。

 紀の川の河川敷に近く、地盤が緩いこともあって建物がジワジワと傾きだし、カウンターに置いた丼が勝手に滑り出すように。改修も考えたが、常連たちから「この味のある店構えが好きやから来るんや。直したら来こやんで」と説得され、そのままにしている。

 そのため、店内にはラーメンを“安心して”食べるための工夫が随所に。各席に置かれた「盆」にはあらかじめ傾斜がつけられており、丼が水平になるよう傾きを補正。さらに手前方向の傾きを微調整するため、丼の下にかませる「こぼれん棒」は妻・明子さん(81)の考案だ。

 元々、常連から愛されてはいたが、「傾いたラーメン店」としてメディア上で情報が広がると、客は2~3倍に増えたという。訪れた日も、駐車場に止まる車のほとんどは県外ナンバー。堺市から初めて訪れたというアルバイトの男性(57)は「移転前に一目見ておきたいと思って来た。ラーメンも、あっさりしておいしかった」と満足そうだった。

 建物の管理者から立ち退きを求められ、移転を決めた豊田さん。現店舗での営業は今月27日までで、6月からは、約1・5キロ離れた和歌山市本町に常連客が所有する建物で新たなスタートを切るという。「長年愛され、雰囲気のある店のたたずまいが消えてしまうのは惜しいが、自信を持っている味は変わらない」と意気込んでいる。(葉久裕也)

2017年05月20日 06時14分    Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 

傾いたラーメン店、平らな新天地へ 別れ惜しむ客続々

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傾いたラーメン店として知られる「まる豊」=和歌山市有本

 店舗が大きく傾いていることで知られる和歌山市のラーメン店「まる豊」が今月下旬、老朽化し、立ち退きも求められたため移転する。開店から35年。名物店舗に別れを惜しむ人々が連日訪れている。

 「また来たで」。常連客が紀の川沿いの土手の下に立つ小さなラーメン店の引き戸を開けた。カウンターのみで、10人も入れば身動きがとれない。扉は軽い力で閉まる。店全体が約8度傾斜しているからだ。

 店主の豊田二郎さん(79)は元々工場で働いていたが、「人の喜ぶ顔が見える商売がしたい」と、40代半ばで転職を決意。終戦直後に建てられた広さ8畳ほどの物置小屋を借りて改装して開業した。

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こぼれん棒と平板=和歌山市有本

 開業5年目で「店、傾いとるやない」と客に言われた。「毎日見ている我が子の身長の伸びがわからないのと同じで、傾きには気づかなかった」と豊田さん。周辺の地盤は軟らかく、前の道路を頻繁にダンプカーが通る。地盤沈下で、当時すでに約5度傾いていた。傾きを理由にわざと器をひっくり返されるなど、つらいこともあった。「自分で選んだ道。同じ店で見返してやりたい」と商売に没頭した。

 傾いたカウンターでラーメンをすすると、汁がこぼれるので、客は器の下に割り箸をはさみ、傾きを調節していた。妻明子さん(81)の発案で、建具屋に長さ10センチ、幅3センチほどのヒノキの平らな棒をつくってもらった。店の名物「こぼれん棒」の誕生だ。

 ただ、こぼれん棒だけでは、ぐらつきがあり不安定だった。そこに建築業の常連客が傾きを付けた自作の板を持って現れた。「おやじ、これ置いてみい。食べやすいぞ」。カウンターに乗せると、ほぼ水平になった。「平板(たいらいた)」と名付けられた。「傾いたラーメン店」として、二つのグッズとともに1990年代後半の和歌山ラーメンブームにものって一気に有名になった。

 「自分の店であって自分の店でない感覚なのよ」と明子さん。客も参加して数々の問題を解決してきたからだ。

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傾いたラーメン店として知られる「まる豊」。開店前に行列ができていた=和歌山市有本

 しかし、建物が老朽化し、所有者側から立ち退きを求められたこともあり、移転を決意した。移転を前に、全国各地から名残を惜しむ客がやって来る。開業当初から通う引網智順さん(63)は「自分が帰ってくる場が移転するのは悲しい」と言う。

 営業は27日までの予定。移転先は現在地から西に約1キロ離れた元喫茶店(和歌山市本町9丁目)。店舗は傾いていない。でも、平板とこぼれん棒を使える席を設けるという。豚骨しょうゆのスープにストレート麺の味は変わらない。豊田さんは「今の店を離れるのはつらいが、まっすぐな新天地でまた一から勝負したい」と話している。(片田貴也、白木琢歩)

2017年5月18日11時44分    朝日新聞デジタル