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世界記憶遺産 : 「松川事件」の登録を申請 福島大

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松川資料室で「世界の記憶」に登録申請した旧国鉄列車の脱線転覆現場の写真を掲げる伊部正之さん=2017年5月10日、土江洋範撮影

 戦後最大級の冤罪(えんざい)事件とされる「松川事件」の関連資料について、福島大は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)への登録を申請した。大学内にある松川資料室で所蔵する約10万点のうち、一点ものなど「えりすぐり」の約400点が対象だ。事件発生から70年近く過ぎ、20人の元被告で存命するのは4人に減った。記憶の風化も懸念される中、福島大は「後世に伝えていく使命がある」と申請の狙いを説明する。【土江洋範】

 松川事件では1949年、福島市松川町東北本線で、何者かにレールが外され旧国鉄列車が脱線転覆し3人が死亡。国鉄労組員ら20人が逮捕されたが、支援運動は全国で約1300組織100万人以上にまで広がり、アリバイを示すメモも明らかになって、63年に全員無罪が確定した。

 福島大は▽転覆現場の写真▽元被告の全員無罪が確定するまでの刑事裁判や国賠訴訟の記録▽毎日新聞が所在をスクープした、アリバイを証明する「諏訪メモ」▽元被告が獄中から送ったはがき▽支援する市民運動の資料--などを申請した。

 登録を目指すのは「世界の記憶」のアジア太平洋地域版。隔年で審査されており、今回は来春に登録物件が決まる予定だ。しかし登録までのハードルは高く、まずは国内選考に残る必要がある。日本ユネスコ国内委員会は今年7月、国内の公募を2件に絞り込む予定だ。

 福島大の中井勝己学長は、登録を申請した10日の記者会見で「申請して結果がどうなるか分からない」と前置きした上で、「松川事件に関する貴重な資料を保管・展示していることを全国的に発信できる機会になる。戦後の大きな冤罪事件として再び位置づけ直し、後世に伝えていく使命を感じている」と申請の意義を語った。

 福島大は81年に福島市中心部から、事件現場から北約2キロの場所に移転した。同じ頃、地元在住の1人の元被告が亡くなり、関係者から事件資料の収集・保存を求める要望が高まったことから、88年に松川資料室を開設。事件発生から70年の節目を迎える前に、元被告の弁護士らと「世界の記憶」登録を目指す呼びかけを始めた。

 松川資料室で整理や研究を担う福島大名誉教授の伊部正之さん(75)は「松川事件の支援運動は世界の社会運動史に輝く金字塔と言える。違法な捜査という国家権力の犯罪を繰り返させないよう事件の資料を後世に伝えなければいけない」と話す。

 資料室は午前9時~午後5時に一般開放されている。問い合わせは資料室(電話024・548・8422)。

毎日新聞    5/16(火) 22:30