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文在寅政権、バランス人事 側近・同志に偏らず 外交・経済は専門家活用

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 【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支える人脈は3つある。盧武鉉ノ・ムヒョン)政権の流れを組む「学生運動」、大統領選を戦った「側近」、各界の有識者が集まる「専門家」のグループだ。ただ、10日発表した人事では、これらの人脈を重用しつつも、地域や派閥などでのバランスも重視し、分断した社会の統合に向けた配慮をみせた。
 「全国から人材を登用します。私に対する支持の有無と関係なく、有能な人材は三顧の礼で迎えます」。文氏は10日の国民向け演説で、こう明言した。その後発表した首相と国家情報院長、秘書室長の「主要3ポスト」人事は、それを裏付けるものとなった。

 首相候補に指名した李洛淵(イ・ナギョン)全羅南道知事は3つの人脈グループのいずれにも属さない。李氏は韓国南西部の「湖南」地方の出身。一方、文氏は南東部の「嶺南」出身で、両地域は歴史的に対立関係にある。湖南には文氏政権の誕生に警戒感があった。文氏は李氏の首相起用で、湖南の不安を和らげるメッセージを送ったとみられている。

 日本でいえば内閣官房長官にあたる秘書室長に就任した任鍾皙(イム・ジョンソク)氏は「学生運動」グループからの登用だ。任氏はもともと朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長(「共に民主党」所属)に近かったが、幅広い人脈と高い調整能力が評価されての起用となった。任氏も李氏と同じ湖南出身だ。

 文氏を支える人脈の中核で、今後の政権運営に深く関わっていくとみられるのが、文氏が2012年の大統領選で朴槿恵(パク・クネ)氏に敗退した直後から今回の大統領選の準備をしてきた「側近」グループだ。

 「側近」グループには40~50歳代前半と若い人材が多く、この中から大統領府で秘書官に登用される可能性が高い。中でも大統領候補秘書室副室長を務めた楊正哲(ヤン・ジョンチョル)氏は、誰とでも丁寧語で接する文氏が珍しくざっくばらんに話す腹心だ。

 1980年代に学生運動を体験した60年代生まれの「386」世代の革新政治家との人脈も太い。彼らが「学生運動」グループとして文氏を支える。共に民主党ナンバー2の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表は大統領選の参謀として、文氏を勝利に導いた。

 大統領選では政治や外交安保、経済分野の専門家らも文氏陣営に名を連ねた。今回、情報機関の国家情報院長の候補に任命された徐薫(ソ・フン)氏は長く国情院に勤務した南北問題に精通した専門家だ。延世大の金基正(キム・ギジョン)教授も外交のブレーンとして関与するとみられる。金教授は日韓関係で外交・経済協力と従軍慰安婦など解決が難しい歴史問題を切り離す「ツートラック」戦略を提唱する。

 大統領選中、文氏は安哲秀(アン・チョルス)氏など他の候補から、「文氏は支持者以外はすべて敵とみなしている」と批判されてきた。文氏は3つのグループの人脈を活用しつつも、それにとらわれない人事を打ち出し、「覇権主義」批判をかわしたい考えだ。

 もっとも、今回の人事には早速、野党が反発している。保守の自由韓国党は10日、「開城工業団地の推進者に秘書室長のポストを任せることを憂慮する」との論評を発表した。

2017/5/11 0:50    日経新聞