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「反保護主義」削除、米譲らず G20財務相会議閉幕

温暖化対策促す記述も消える

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 【バーデンバーデン(ドイツ南西部)=上杉素直、河浪武史】18日閉幕した日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議は、「米国第一」を掲げる米トランプ政権の経済・金融政策を各国が瀬踏みする場になった。米がこだわる通商分野では中国も強硬姿勢を示し、議論が紛糾。米の立場を色濃く反映して温暖化対策を促す記述も消えるなど、国際協調に向けた結束に大きな亀裂が生じた。

 「まるで痛み分けだ」。貿易分野の激しいやり取りを交渉関係者がため息交じりに振り返った。米国はG20会議がほぼ毎回といっていいほど打ち出してきた「反保護主義」に代えて、「自由で公正な貿易」という文言を声明に盛り込むよう事務レベルの事前調整の段階から主張した。

 中西部の製造業労働者の支持を受けたトランプ政権にとって最優先課題は貿易赤字の解消と雇用の回復だ。米通商代表部(USTR)代表に指名されたライトハイザー氏が「農業分野では日本が第一の標的だ」と語るなど強硬だ。G20会議でも米がかたくなに「反保護主義」を各国に確認させまいとする姿にも、トランプ流のこうした強硬姿勢が表れている。

 G20関係者によると、日本や欧州が様子見を決め込むなか、米国に反論したのは米国のモノの貿易赤字の半分を占める中国だ。「公正」という言葉を持ち出して中国の貿易黒字縮小を迫ろうとしている。こうした米の意図をかぎ取った中国は、「公正が何を意味するのかはっきりしない」と主張した。先鋭化する米中対立を収めきれないとみた議長国ドイツ。貿易政策に関する有意な表現を声明から落とさざるを得なくなった。海外メディアによるとショイブレ独財務相は貿易討議が「複雑だった」と述べた。欧州の一部閣僚も、通商で一致点を見いだせず「残念だ」と漏らした。

 見逃せないもう一つの焦点が、為替政策を巡る力学変化だ。トランプ大統領は「我々の通貨は強すぎる。(米企業は)競争できない」と強調。米国はG20会議に向け「通貨安競争を懸念する」との文言を声明に入れるよう求めていた。

 「競争を懸念する」と明記すれば、現在どこかの国が通貨安誘導に動いている、とけん制する明確なメッセージだ。トランプ氏はかつて日本と中国を名指しして「通貨安誘導だ」と批判。国家通商会議のナバロ委員長もドイツを「ユーロ安で恩恵を受けている」とやり玉に挙げた。「懸念」は日中独を指すのが明白なだけに、3カ国は文言変更に反対した。

 ふたを開けてみればムニューシン米財務長官は「強いドルは長期的によいことだ」と繰り返し、為替政策では安全運転に徹した。共同声明の文言は前例踏襲になり、通商分野とは対照的ともいえる米国の柔軟さをうかがわせた。「実務がわかっている」。ムニューシン氏と初めての日米財務相会談で為替政策について議論した麻生太郎財務相は17日、相手をそう持ち上げた。

 もっとも米財務省はナンバー2の財務副長官らがまだ不在だ。「政権の体制が整っていない」(国際金融筋)という苦しいデビュー戦であり、米国の今後の出方は不透明。日本の当局者も内心、穏やかでない。

 国際担当の財務次官への指名が14日発表されたデービッド・マルパス氏は2013年、安倍政権下で進んだ円安を批判。トランプ氏と同様、金融緩和がもたらす通貨安に厳しい目を光らせているとされる。1980年代のレーガン政権下で財務副次官補を務め「プラザ合意」前後の情勢に詳しい。同氏が着任すれば通貨政策でも強硬姿勢が強まるとの見方が通貨マフィアの間にはある。

 4月に初めての経済対話開催を控えた日米両政府。麻生氏がムニューシン氏との会談でも真っ先に取り上げたのがこの対話だった。G20や財務相会談という前哨戦は無難に乗り切ったが、日米の経済関係はこれから緊迫した本番を迎える。

2017/3/19 1:30    日本経済新聞 電子版

 

 

保護主義に対抗」声明に入れず…G20閉幕

 【バーデンバーデン(ドイツ)=栗原健、井口馨】ドイツで開かれていた主要20か国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議は18日、共同声明を採択して閉幕した。

 声明には、G20がこれまで認識を共有してきた「保護主義に対抗する」との文言が盛り込まれなかった。1月に発足したトランプ米政権が文言の削除を求めていたとされ、自由貿易の堅持で協調してきたG20の結束に綻びが出た格好だ。

 声明では、世界経済について「回復は進んでいるが、そのペースは弱く、下振れリスクが残っている」との認識で合意した。貿易政策に関しては「経済への貢献を強化する」との表現にとどまり、自由貿易を示す言葉も削られた。

 今回のG20は、通商政策や為替政策で「米国の利益を損なっている」と主張するトランプ政権の出方が注目されていた。声明には、各国・地域が連携して取り組むべき気候変動に関する言及もなく、地球温暖化対策などに反対するトランプ政権の影響が色濃く反映された。
2017年03月19日 00時28分    Copyright © The Yomiuri Shimbun