今日のニュース

気になったニュース

地球はありふれた星か 39光年の彼方に7姉妹

f:id:obaco:20170312120048j:image

 米航空宇宙局(NASA)は2月、地球と同じくらいの大きさの太陽系外惑星を一度に7つも見つけたと発表した。そのうち3つの惑星は地球と同じように海が存在する可能性があるという。今回は数の多さだけでなく、近い将来に実際に惑星に水が存在するかを観測で示せる可能性が高いことも、大きな注目点だ。地球は特別な惑星ではなく、ありふれた存在である可能性が高まっている。

 「こんな天体が存在すると予想した人はいなかったのではないか」。今回の発見に、太陽系外惑星に詳しい田村元秀東京大学教授も驚きを隠せない。地球サイズの惑星が7つも見つかったのも驚きなら、少なくとも3つは液体の水があって生命が存在できる可能性があるからだ。

 英科学誌ネイチャーに載った論文で「地球の7つの姉妹」と名付けられた7惑星は地球から39光年離れたところにある恒星「トラピスト1」の周りを回っている。恒星は太陽と同様に自ら光る星だ。それぞれの惑星の大きさは地球の0.76~1.13倍。このうち6つは質量も地球と似た岩石でできた惑星と考えられる。

 トラピスト1は赤色わい星と呼ばれる小型の恒星で、直径は太陽の約10分の1と木星より少し大きい程度だ。7惑星も地球と太陽の距離の数十分の1と、太陽系で太陽に最も近い水星よりずっと恒星に近い場所を回っている。しかしトラピスト1の表面温度は太陽より低いので、惑星のある場所の温度がちょうど生命の存在に適した「ハビタブルゾーン」に入るとみられる。

 これまでに発見された太陽系外惑星は3000個を超える。地球と似た大きさで、ハビタブルゾーンに入っているとみられる惑星も10個以上見つかっている。そうしたなかで今回の発見が注目されるのは、数の多さだけでなく、本当に水が存在するかどうかを観測で確かめる初めての機会と考えられるからだ。

 理由は惑星の軌道と地球からの距離だ。7惑星は地球から見て、ちょうどトラピスト1の前を横切る軌道を持つ。横切る際に観測される光のスペクトル(波長成分)は、惑星の大気の水に影響されて変化する。惑星がいないときと、惑星が横切るときのトラピスト1の光のスペクトルを比べれば、惑星に水が存在するか分かる。太陽系外惑星を見つける「トランジット法」と呼ぶ観測法を応用したものだ。

 従来、水が存在するかもしれないとされた太陽系外惑星は、恒星の表面温度と恒星と惑星の距離から、水の存在に適した温度になるかを推定していた。これまでも恒星の前を横切る地球サイズの太陽系外惑星が見つかっているが、光のスペクトルの微妙な変化を観測するには遠すぎた。

 英ロンドン大学などが昨年見つけた地球に似た惑星「プロキシマb」はハビタブルゾーン内にあり地球から4.2光年と近いが、恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の前を横切らないので観測できない。観測可能な距離と軌道を持つ惑星は今回が初めてだ。

 来年にもこうした観測に適した新型宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ」をNASAが打ち上げるタイミングのよさもある。米ハワイにある国立天文台の「すばる」のような地上の大型望遠鏡でも水の観測は可能だが、地球の大気に含まれる水分の影響を受けやすく、成功するかは微妙だ。だが大気の影響を受けない宇宙から観測し、口径6.5メートルと大型のジェームズ・ウェッブなら、水の有無を見極められると考えられている。

 田村教授は今回の7惑星に関する発表について「次に何をしたらよいか読めるという意味でも興奮するデータだ」と話す。水の存在が確実になれば、惑星上に生命が存在する可能性はぐっと高くなる。

 トラピスト1のような赤色わい星は、宇宙では太陽以上にありふれた恒星だ。太陽タイプの恒星が宇宙の約10%なのに対し、赤色わい星は約75%を占める。他の赤色わい星でも多くの惑星があれば、地球のような惑星は宇宙にありふれていることになる。

 惑星は従来、恒星の周りのガスなどから巨大なガスの塊の木星タイプが生まれ、その後に岩石でできた地球タイプができると考えられてきた。今回のように赤色わい星の周りに地球サイズの惑星が7つもできる理由は現在の理論では十分説明できないという。

 トラピスト1のような赤色わい星に、生命が誕生可能な惑星が存在するかという研究は始まったばかりだ。近い将来、トラピスト1の惑星に本当に水が存在するかどうかが確認されるだけでなく、赤色わい星の周りを回る数多くの地球に似た惑星が見つかるかもしれない。

(小玉祥司)

ハビタブルゾーン

 ハビタブルとは生命が存在可能という意味で、水が凍ったり沸騰して水蒸気になったりせずに、液体の状態で存在できる範囲を指す。惑星表面の温度がセ氏0~100度になることが必要で、恒星の温度と、恒星から惑星までの距離に左右される。太陽系では地球のほかに火星もハビタブルゾーン内の惑星だ。

 太陽よりずっと小さな赤色わい星は、表面の温度も低いため、ハビタブルゾーンも太陽系に比べると10分の1程度の近い距離になる。恒星からの距離が近くなると、恒星から放出される紫外線や宇宙線の影響を受けやすくなるなどの問題も起き、生命が生まれるには大気の存在が一層重要になると考えられている。

2017/3/12付   日本経済新聞 朝刊