今日のニュース

気になったニュース

月 誕生諸説、決め手なし 巨大衝突説に矛盾→複数衝突説

f:id:obaco:20170209174231j:image

月の誕生を巡る諸説

 地球の衛星である月。短歌などの芸術作品でも親しまれ、誰にとっても身近な存在だ。しかし、その起源となると諸説あるもののどれも決め手とは言えず、謎のまま。1月には新説も登場したが支持を得られるか。誕生を巡る研究の最前線を報告する。【渡辺諒】 

 ●岩石の組成から

 「これまでの起源説には矛盾があったが、我々の説はそれを克服できる」。イスラエルのワイツマン科学研究所などのチームは1月、英科学誌ネイチャージオサイエンス電子版に新説を発表した際、こう強調した。

 これまでの説とは「巨大衝突説」を指す。地球の直径の約半分にあたる火星ほどの大きさの天体が原始地球にぶつかり、飛び散った両者の岩石やガスが地球を回りながら寄り集まって月が形成されたとする考え方だ。コンピューターシミュレーションで確かめるなど1980年代から科学的に検証され、最も有力な説とされている。

 ただ、説明できない大きな弱点がある。月ほどの直径の衛星ができるような角度や速度で大きな天体が地球に衝突すると、飛び散る破片はぶつかった方が多くなる。計算上は月の岩石の由来は7~9割が衝突した天体、残りが地球のはずだ。しかし、米国のアポロ計画で持ち帰った岩石を調べると、組成は地球とほぼ同じ。新説を発表したチームが指摘した「矛盾」はこれを指し、巨大衝突説が決定打となっていない理由でもある。

 ●20回衝突可能性は

 巨大衝突説が、大きな天体が地球に1度だけ衝突して月が誕生したと唱えるのに対し、1月の新説は、地球の質量の100分の1程度の天体が複数回衝突して形成されたとする考え方だ。

 1000パターンのシミュレーションを検証した結果、小天体が何度もぶつかるうちに地球の周りに岩石などで輪ができ、やがて小さな衛星が20個ほど形成。さらにそれらが融合して一つになる様子を再現できた。現在の地球と月の状態によく合うという。

 ぶつかる天体が小さければ、地球の表面から飛び散る岩石の方が圧倒的に多くなり、月が地球と同一組成を持つ。巨大衝突説の矛盾は解消できたが、東京工業大の玄田英典特任准教授(惑星科学)は「計算上うまく説明できても、実際に20回も好条件の衝突が起きる可能性はあるのか。その点を割り引く必要がある」と冷静にみる。

 月の起源を巡り、これまで▽地球とは別の場所で誕生した天体が、その後地球の重力とガスに捕らえられた「捕獲説」▽衝突なしに遠心力で地球から分離したとする「分裂説」▽地球の周りで独立してできたとする地球との「双子集積説」--もあった。しかし研究が進むに従っていずれも否定されるようになった。

 ●世界で探査計画

 決定的な起源説を組み立てようと、各国は月の探査計画を進めている。日本の宇宙航空研究開発機構JAXA)は2007年9月に月周回衛星「かぐや」を打ち上げ、地形や元素分布など多くのデータを得てきた。20年には月面に無人探査機を送る計画も立てている。有人探査は米国では民間企業、中国では国として目指す計画もある。

 調査拠点となる有人の月面基地を国際協力で建設する動きもある。地震波を解析し、月の内部構造や中心部にある鉄分の量などが分かれば、研究が進むとみられる。また、クレーターができた時期を探れれば月の進化も分かるという。寺薗淳也・会津大准教授(惑星科学)は「探査機・はやぶさが小天体から持ち帰った岩石試料の組成などで太陽系成立の研究が進めば、そのころあった月誕生の謎解明にも近づけるだろう」と話す。

毎日新聞     2/9(木) 11:40