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各地に「日本一低い山」、2万人以上「登頂」も

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松林にひっそりと立つ石柱。登頂する人は後を絶たない(東かがわ市で)

 日本一低い山はどこか――。

 最高の富士山と違い、最低の山は定義がはっきりしないことから各地で〈日本一争い〉が起きている。境内裏にある御山みやまに「日本一低い山」と記された石柱が立つ香川県東かがわ市松原の名勝・白鳥神社はそうした競争には参加せず、着実に登頂者を増やして地域おこしにも一役買っている。

 ◆台風で発見

 白鳥神社裏の松林の中に、「御山 日本一低い山 三・六メートル」と記された石柱がある。登山者には登山証明書も発行され、1月末までに延べ2万1232人が登頂した。

 「御山は、台風がきっかけで発見されたんです」。同神社の猪熊兼年宮司はそう語る。大きな被害をもたらした2004年の台風23号では、神社周辺の住宅まで浸水した。周辺が水浸しになる中、浮島のように頭を出していたのが御山だったという。

 氏子らで作る「こま犬会」が調べたところ、旧白鳥町がまとめた都市計画図では御山は海抜3・6メートルの地点にあり、周囲で最も高い場所だと判明。1912年、白鳥本町尋常高等小学校が編さんした郷土史でも「御山」の記述があり、当時から山として認知されていたこともわかったため、2005年8月に山開きした。

 ◆「山」って何?

 辞書の定義によると、山は「周囲よりも高く盛り上がった地形や場所のこと」と素っ気ない。国土地理院発行の地形図には、各地の山の名前が掲載されてはいる。ただ、同四国地方測量部(高松市)は「自治体からの聞き取りに基づき、あくまで地名の一部として掲載している。山であるかないかをこちらで決めることはない」と、山の定義まではしていない。

 地形図では、御山を含む神社一帯は瀬戸内海国立公園の一部になっており、山の名前も標高の記載もない。担当者は「今から表記を変更するのは非常にハードルが高い」と話す。

 ◆“低山論争”

 あいまいな定義の中、「日本一低い山」という主張は国内各地でみられる。中でも、大阪市天保山仙台市日和山の綱引きが有名だ。古くから日本一を主張していたのは標高6・1メートルの日和山だったが、1996年、それまで「公園」として認知されていた天保山住民運動で「標高4・5メートルの山だ」と言われるように。ところが、日和山東日本大震災津波により約3メートル削られ、再び日本一になった。

 2者に横やりを入れるのは、標高6・1メートルの弁天山(徳島市)。周辺住民の主張はこうだ。「天保山日和山も、元々は江戸時代に出来た盛り土。対して、弁天山は昔から自然にある山」

 だから、弁天山こそ日本一なのだという。

 ◆目くじら立てず

 「自然にある山」というくくりなら、日本一の座を守れるかもしれない御山。そこでは今も、多くの人が様々な動機で登山に訪れる。「富士山に登ったから、低い山にも登りたかった」という若者もいれば、「足腰が悪くなった」と訪れる元山男も。

 2007年度、こま犬会は地域づくり総務大臣表彰(団体)を受けた。「日本一低い山をコンセプトに積極的に地域おこしを行い、地域の象徴として広く親しまれている」と評価された。

 猪熊宮司はこう達観する。「あそこより高いとか低いとか、自然だ人工だと目くじらを立てて争わずに楽しみましょうよ。田舎の神社に2万人以上も訪れてくれたこと自体、『日本一』ではありませんか」(妻鹿国和)

2017年02月09日 07時25分    Copyright © The Yomiuri Shimbun