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なぜ? アメリカ人の認知症の発症率が低下

 高齢で肥満、しかも糖尿病や高血圧の人が増え続けているので、認知症の発症率が高くなると懸念されていたが、全米レベルの大規模な最新調査によると、逆に低下していることが分かった。また、認知症になる年齢もより高くなっている。

 以前の調査でも似たような傾向が示されていたのだが、それは調査規模が小さく、調査対象もマサチューセッツ州フラミンガムなど限られた地区に住む主に白人で、地域や人種などの多様性があまり反映されていなかった。

 今回の最新調査によると、65歳以上のアメリカ人高齢者が認知症になる比率は2000年から12年までの間に24%下がった。これについて、ペンシルベニア大学の人口学者サミュエル・プレストンは「統計学的にも有意義な数字であり、すばらしいこと」と指摘する。彼はこの調査に関係していない。

 さらに、「とてもいいニュースだ」とアメリカ国立老化研究所(NIA)の行動社会調査部長ジョン・ハーガも言う。彼によると、65歳以上のアメリカ人で認知症になる人の数は、2000年時点での比率をもとに推計した場合と比べ、約150万人減少したことを意味する。

 アメリカでは毎年、ざっと400万人から500万人が認知症になっている。認知症はアメリカで最も経済的負担が大きい疾病で、NIAによる2010年時点の推計だと、認知症患者のケアには年間総額2150億ドルかかった。心臓病患者の1020億ドル、がん患者の770億ドルよりもはるかに多い。

 今回の調査結果はアメリカ医学誌「JAMAインターナル・メディシン」のオンライン版(2016年11月21日掲載)で発表された。この調査は「ヘルス・アンド・リタイアメント・スタディー(Health and Retirement Study=健康と退職後の研究)」に参加している65歳以上のアメリカ人2万1千人を対象にしたもので、すべての人種、教育および所得レベルを網羅している。NIAの資金で行われた調査だが、データの収集や分析、解釈にNIAは関与していない。

 認知症の診断では、いくつかの方法を使う。10個の名詞を示して記憶させ、少し間をおいて思い出させること、数字を100から7ずつ順に引いていくこと、20から数字を逆に数えることといったテストも行う。記憶力や思考力を多面的に調べるのだ。

 教育レベルや所得、健康状態などについても聞いた。

 認知症の発症率の低下という調査結果は、ある意味で(研究者たちには)予想外だったのかもしれない。というのも、糖尿病患者が増えている状況での低下だからだ。アメリカ人高齢者(訳注=65歳以上)の糖尿病の発症率は1990年時点で9%だったが、2012年には21%にまで上がった。それが下がり始めたのはつい最近のこと。糖尿病は認知症の発症リスクを39%高めるという研究がある。

 また、高齢者ほど血圧や血糖値、コレステロール値が高くなり、心血管疾病の危険要因が増えるが、それは認知症になるリスクも高める。しかし、そうした危険要因を制御する薬物療法も広まっていることが認知症の発症率低下に寄与しているのかもしれない。

 肥満との関係についての調査結果には、(研究者たちは)困惑している。体重過多で肥満の人の場合、体重が正常値内の人と比べて、認知症の発症リスクが30%低いという調査結果がでたからである。さらに、体重過少の人はリスクが2.5倍も高かった。ところが、中年で肥満の人は高齢になった時の認知症の発症リスクが高まるという研究も一方にある。

 教育レベルについては、どうか。アメリカ人の高齢者は2012年時点の調べで、2000年時点の高齢者より教育を受けた期間が平均して1年間長い。今回の調査結果によると、教育を受けた期間が長い人は認知症リスクの低下と相関関係がある。この点は、他の研究でも同様の結果がでている。

 だが、なぜ教育が認知症リスクを減らすのかは、まだはっきり分かっていない。仮説として、知的経験の蓄積が考えられる。つまり、教育が脳に及ぼす働きで、認知症の発症を防ぐような作用をしており、より長期間の教育を受けた人は認知障害をうまく補完できる脳を備えているとする仮説だ。

 教育は、資産とも関係がある。教育レベルが高い人は、低い人とは違った生活環境で暮らす傾向があり、全般的により健康な生活をしている。比較すると、喫煙者も少ない。

 アフリカ系アメリカ人は、認知症の発症リスクが高い。その理由としては、教育レベルが比較的低く、資産も少なく、心血管疾病の危険要因を多く抱えていることなどが考えられる。しかしながら、それで十分な説明ができているわけではない。

 全体的に認知症の発症率が低下しているとはいえ、アメリカでは今後数十年間に高齢化が進み、とりわけ認知症リスクが高まる85歳以上の高齢者が増えると見込まれている。したがって、認知症になる人の総数は、かつての推計ほどではないにしても、増大するはずである。(抄訳)

(Gina Kolata)

(C)2016 The New York Times(ニューヨーク・タイムズ

2017年1月18日17時51分    朝日新聞デジタル