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「元日即位だと不眠不休になる」 宮内庁から異論も

政治・行政 皇室

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天皇陛下の年末年始の主な行事

 天皇陛下が退位した場合、新天皇の即位や新元号のスタートはいつになるのか。区切りのいい1月1日とする政府の方向性に、宮内庁の西村泰彦次長が異議を唱えた。なぜ元日ではダメなのか。ほかにどんな選択肢があるのか。
 西村次長の発言の背景には、元日が皇室にとって行事が集中する特異な日であるという事情がある。

 元日は宮中祭祀(さいし)の四方拝に始まり、皇族方や三権の長を迎える新年祝賀の儀などの行事が続く。「どれも皇室にとって重要で、両陛下が大切にしてきた行事」(宮内庁幹部)だ。翌2日には5回の新年一般参賀があるほか、年末年始は12月23日の天皇誕生日から、1月中旬の歌会始の儀まで儀式や行事が連日続く。「もし元日の即位となったら年末年始と不眠不休になる」「準備作業がおろそかになりかねない」との声が宮内庁職員からあがっていた。幹部の一人は「新年行事を大切にする両陛下のお気持ちや、準備に関わる宮内庁全体の総意をきちんと示そうということになった」と説明した。

 菅義偉官房長官は17日の記者会見で、宮内庁の西村泰彦次長の発言が天皇陛下の意向を踏まえたものか問われ「『一般論』と西村次長が言っているから、その通りじゃないですか」と述べた。首相官邸幹部は、西村氏の発言について「宮内庁の事務方としては当たり前」と指摘。元日の皇室行事が立て込んでいることなどから、元日に皇太子さまが新たな天皇に即位し、その日に合わせて改元するのは現状では困難との訴えだと受け止める。

 政府内では改元時期の候補として天皇誕生日の12月23日や新年度の4月1日も挙がる中、カレンダーなどの印刷物やコンピューターのシステム改修など国民生活への影響を最小限に抑えるための「元日改元」が有力視されている。官邸幹部は「きりのいいところで改元するというのが、一つの考え方だ」と話す。改元に伴う社会の混乱を避けるため、新元号は、皇太子さまの即位よりも前倒しして発表する方向で検討している。

 元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏は、「元日即位ということになると、元日午前5時半から天皇が行う四方拝などの祭祀に先立ち、未明に新天皇の即位に伴う剣璽(けんじ)等承継の儀などの諸行事を行うべきだが、現実的には無理。法的な問題とすりあわせ、本来の儀式の意味合いや順序を筋立てて決めるべきだ」と語る。

 原武史・放送大教授も「皇室の儀式が目白押しとなる元日の改元は難しい。昨年8月のお言葉でも『祈ることを大切にしている』との話があり、天皇家として儀式はゆるがせにできないはず。もっと予定が少ない時期を選んだほうがいいだろう。ただ、新年度の4月1日改元だと、その年の11月に大嘗祭(だいじょうさい)ができない。大嘗祭新嘗祭(にいなめさい)は祈年祭など2月ごろから一連の儀式が始まるからだ」と指摘。

 所功京都産業大名誉教授は「年末年始の慌ただしい中での皇位継承は適当でない。国民統合の象徴にふさわしい新たな儀式は、今上天皇が退位し、皇太子さまが新天皇に即位するのだと、国民が実感を伴って理解し、共感するような形であるべきだ」として、「12月23日の天皇誕生日皇位継承の儀式を行い、翌年元日から改元するのも一案だ」と語る。

 一方、小田部雄次静岡福祉大教授は「今回、宮内庁から異論が出たところをみると、安倍政権が天皇家の声をきちんと聞いているのか疑問に思う」と指摘。「現代社会の合理主義と、天皇家の祭祀の伝統との間には矛盾がある。折り合いをつけて両者を併存させていくためには、政府が宮内庁を通じて天皇家の意向をきちんと把握することが必要だ」と話す。

 作家の保阪正康氏も「皇室典範改正か、特例法制定かといった有識者会議の議論さえ結論が出ていないのに、改元の日付などの技術論ばかり先行して報道されるなど、議論が先走っている印象があった。今は皇位継承や儀式のあり方など、落ち着いて本質の議論を進めるべきではないか」と話す。

2017年1月18日05時09分    朝日新聞デジタル