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島根女子大生殺害 「捜査に支障」語らぬ会見、真相は闇

 広島県内の山中で島根県内の大学1年の女子学生(当時19歳)が遺体で見つかった事件で、2日後に交通事故死した同県益田市の会社員、矢野富栄(よしはる)容疑者(当時33歳)を殺人容疑などで書類送検した島根・広島両県警の合同捜査本部は20日の記者会見で「総合的に組み立てて判断した」と強調した。殺害の直接証拠がないことを認めつつ、「捜査に支障がある」と根拠の説明を避ける場面が多く、会見の質疑は約2時間半に及んだ。

 記者会見は合同捜査本部がある島根県警浜田署であり、同県警の杉原知行・捜査1課長らが事件発生から7年と捜査が長期化した理由を説明した。

 乏しい物証の中、細かい事実をつないではやり直す地道な捜査を強いられたこれまでを振り返った。延べ約32万人の捜査員を投入して「決定的な証拠」を発見したのは今年10月。矢野容疑者が当時仕事で使っていたデジタルカメラなどが、矢野容疑者の関係先から見つかり、女子学生の姿と矢野容疑者宅が写った画像が復元された。

 矢野容疑者のカメラなどがなぜ関係者の手に渡り、どうやってそれを突き止めたのか。杉原課長は「容疑者が死亡しているので言えない」としたが、矢野容疑者の知人によると、カメラは事故死の後に勤務先から親族に返されたものとみられる。

 矢野容疑者は素行不良者として捜査の初期段階から把握された多くの人物の中に含まれていたが、最近になって容疑者として捜査線上に浮上したという。画像へたどり着くまでに、どのように絞り込んだのか。杉原課長は「捜査した関係者との信頼関係を崩したくない」として説明を避けた。

 捜査では女子学生の連れ去りや殺害の現場が特定できず、死亡で弁明の機会がない容疑者の立件で明示できたのは当初の遺棄現場に加え、遺体を損壊したのが矢野容疑者の自宅ということだけだった。自宅での血痕検出やDNA型鑑定の有無についても、「捜査の具体的な中身は答えられない」とした。また司法解剖で特定できなかった死因が画像から窒息死と判明したと説明したが、詳しい根拠は示さなかった。【安高晋、長宗拓弥】

市民、捜査検証を

 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 事件の容疑者を特定し、迷宮入りを防いだ点は高く評価すべきだが、このままだと公判が開かれないため秘密のベールに覆われた捜査で終わってしまう。裁判員裁判の対象となる事件の容疑者が死亡して不起訴になった場合でも、検察審査会で捜査のあり方を検証することは制度上可能であり、今後は運用を確立し、適切な捜査だったか市民の目でチェックできるようにすることが望ましい。

「まじめで誠実、信じられない」

 事件当時、矢野容疑者が勤務していた山口県下関市ソーラーパネル販売会社の元社長は「おとなしく、まじめで誠実だった」と振り返り、書類送検に驚いた様子だった。

 元社長は2009年4月、職業安定所の紹介で来た矢野容疑者を面接した。印象が良くて採用を決めたが、ラーメン店でのアルバイトをすぐに辞められないとの理由で入社は5月にずれ込み、島根県益田市に配属された。数カ月でソーラーパネルを6台も売るなど「営業成績はすこぶる優秀だった」という。

 女子学生の遺体が発見された同年11月6日夜、「用事があるので、明日から2日間代休がほしい」と電話があった。休みの申請はこれが初めてだったといい、事故死したことを受け、益田市の社宅にあった遺品を親族に渡したという。

 今年に入って島根、広島両県警の捜査員らが数回訪れ、矢野容疑者の勤務状況などを聴かれたが、詳しい事情は知らされず事件に関与した疑いがあるなど考えもしなかった。元社長は「(矢野容疑者には)いい印象しかない。今でも信じられない気持ちだ」と嘆息した。【上村里花】

 毎日新聞    2016年12月20日 23時38分