今日のニュース

気になったニュース

「土人」どこから? ネットでは福島の人に使われる例も

 「ぼけ、土人が」。沖縄県東村(ひがしそん)高江の米軍ヘリパッド建設現場で、抗議活動中の市民に機動隊員が投げつけた発言に、批判が高まっている。発言の背景に沖縄に対する本土側の差別意識を指摘する声もある。

 那覇市から北に約100キロ、米軍普天間飛行場の移設予定地とされる名護市辺野古のさらに先に東村高江地区はある。米軍北部訓練場の返還条件として、ヘリパッドが6カ所造られようとしている。差別発言は、18日午前にあった。

 沖縄在住の芥川賞作家目取真俊(めどるましゅん)さん(56)が、当時の様子をビデオで撮影していた。現場は資材搬入用ゲートのそば。フェンスをよじ登ろうとした反対派と機動隊が言い争うなかで機動隊員が叫んだという。「どこつかんどるんじゃ、ぼけ、土人が」。目取真さんは「権力を持った警察の中に差別意識が蔓延(まんえん)しているのだとしたら怖い」と話す。

 ヘリパッドに反対する住民らはゲート前で連日座り込みを続ける。県内の教職員OBら労働組合の関係者が多いという。これに対し、機動隊は警視庁、大阪府警、千葉、神奈川、愛知、福岡の各県警から総勢数百人が集められ、沖縄県警の指揮下で交代で警備についている。

 抗議活動は激しくなり、17日にはリーダー格の男性が、訓練場との境界を示す鉄条網を切った疑いで逮捕され、20日に傷害などの疑いで再逮捕された。

 「土人」と発言したのは大阪府警から派遣された20代の男性機動隊員だった。府警は20日、この隊員の調査を開始。「シナ人」と言った別の20代の男性機動隊員についても調査している。2人の発言には20日夕までに計700件を超える意見が寄せられ、ほとんどが批判だった。警察庁の坂口正芳長官は20日の記者会見で「このような事案の絶無を期すとともに、適切な警備を行うよう指導を徹底していきたい」と語った。

 菅義偉官房長官は20日の記者会見で「許すまじき行為であって、警察において再発防止など適切に厳しく対応する」と述べた。稲田朋美防衛相は20日の参院外交防衛委員会で「不適切な発言であり、大変残念な発言だ」と述べた。

 沖縄県の翁長雄志知事は20日、県庁で池田克史県警本部長に「他の都道府県でこんなことあるのか。沖縄だけじゃないのか」と抗議。池田本部長は「発言で傷つけられた方、県民の方に深くおわびを申し上げたい」と謝罪した。

 一方、大阪府松井一郎知事は19日夜、ツイッターに「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」と投稿。松井氏は20日午前、記者団に「沖縄の人の感情はあるので言ったことには反省すべきだと思う」とした上で「そのことで個人を特定され、あそこまで鬼畜生(おにちくしょう)のようにたたかれるのはちょっと違うんじゃないか。相手もむちゃくちゃ言っている」と主張した。

 「土人」という言葉はどこから来たのか。東京沖縄県人会の事務局長、島袋徹さん(79)は「今どきそんな言葉を言う人がいるとは」と驚く。「日本のために米軍基地は必要で沖縄が我慢すべきだと思う人もいる。それに通底している」

 ネットニュース編集者の中川淳一郎さん(43)は「『土人』という言葉はネット上で沖縄と福島の人に対して使われることが多い」と指摘。「基地や原発の被害者という理由で補助金で暮らしている」と勝手なイメージを持ち、馬鹿にする意図とみられるという。「若い機動隊員がネットで『土人』という言葉を覚えた可能性は十分にある」

 沖縄出身の松島泰勝龍谷大教授は「沖縄全体に向けられた言葉だと受け止めている」と憤る。1903年に大阪であった博覧会場周辺で沖縄の人らが見せ物として展示された「人類館事件」を思い出したという。「100年たっても根底にある差別意識は変わっていない。こうしたヘイトスピーチが生まれる土壌が本土側にはずっとある。多くの沖縄の人は、もうあきらめに近い心境になっている」

2016年10月21日05時12分    朝日新聞デジタル

 

 

滅びたと思っていたのに… 作家・大城立裕さん【インタビュー「土人」発言・1】

 沖縄人を「土人」と呼ぶのは、子供のころは、ヤマト(本土)からの差別用語として伝えられ、違和感やら反発やら高かったが、時代が下って、滅びたと思っていた。そこへ降って湧いたような事件で、驚いている。

 一警官が使ったというだけでなく、彼に伝えた世間があるのだろう。親か、どういう世間だろうかと興味がある。それより、この機動隊の組織が、沖縄に対して、どのような姿勢で教育をしているかに、深い興味がある。

 さらに、いま起きている事件にどういう反省をしているか、が問題だ。指導者は、この語の由々しさについてよく知っているだろうから、これからどうアフターケアを図るか、よく考えてしかるべきだろう。弾圧するにも、もっと正々堂々と進める道があろう。これでは、余計に反発を買うだけだ。

 改めて思うが、機動隊員には県民もいるはずで、彼らに嫌悪感をいだかせない用心をすべきだろう。県人の機動隊員が、ただでさえ、ヤマトの機動隊のなかで居心地がよくないであろうのに、これでは火に油を注ぐことにならないか。教育担当者は、県人機動隊員への温かい処遇も考えてほしいものである。

■ ■

 沖縄県東村高江周辺の米軍北部訓練場内のヘリパット建設に反対する市民に対し、機動隊員が「土人」「シナ人」などと言い放った。発言の意味や背景を識者らに聞く。

沖縄タイムス   10月20日(木)20時30分