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シリア停戦1週間 続く空爆、合意形骸化も

2016/9/19 22:27    日経新聞

 【カイロ=岐部秀光】米国とロシアが合意したシリアの停戦は19日、発効から1週間が経過。東部デリゾールで17日に米軍がシリア政権軍を誤爆したとみられるほか、18日にはアレッポで政権軍による空爆も行われたもようだ。再び合意が形ばかりになる懸念が向けられている。シリアの将来をめぐってアサド政権の存続を主張するロシア主導のシナリオが濃くなっていることに反体制派の不満も強まっている。

 ロシア国防省当局者は19日、「反体制派が停戦に違反しているのに、シリアの政権軍だけがこれを守るのでは意味がない」と述べ、反体制派による戦闘を制御できない米国を間接的に批判した。アサド政権はデリゾールの「誤爆」について「米が意図的に攻撃した」と批判した。

  北部アレッポではおよそ19万人が食料や水、医薬品の深刻な不足に苦しんでいる。国連のオブライエン人道問題担当事務次長は19日、小麦などを積んだ20台の国連トラックが隣国トルコの国境で足止めされているとし、「痛ましい状況に失望している」と述べた。支援を届けるうえでの安全が確保できず、アサド政権による承認も得られていないという。

 シリア人権監視団(英国)によると、アレッポでは18日の空爆で1人が死亡した。反体制派の拠点を狙ったアサド政権軍による攻撃とみられる。南部のダラアでも同日、反体制派に対する砲撃で10人の民間人が死亡した。停戦発効から1週間で少なくとも26人の民間人が犠牲になった。

 米国は政権と反体制派の戦闘を停止し、戦力を過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に集中したい考えだ。だが、そもそもシリアの内戦は民主化運動「アラブの春」で蜂起した民衆に対し、アサド政権が激しい弾圧を行ったことがきっかけで始まった。政権打倒を目標にする反体制派は「われわれは米の雇い兵ではない」(在英の反体制派関係者)と、ISとの戦いばかりを強いる米への不信感を強めている。

 2001年の同時テロから今月で15年を迎えた米国では、ニューヨークでの爆発事件もあり、有権者がテロ問題に神経をとがらせているとみられる。テロ組織の掃討を重視する米国と、反体制派の溝は一段と深まるおそれがある。

 2月と今月のシリア停戦合意は2回ともロシアが主導して実現したものだ。人道危機が深刻化するなか米国も応じざるを得なかった面がある。

 最初の合意は、政権側による医療施設への攻撃に反体制派が反発したことなどから崩壊。人道危機はむしろ深刻化した。一方、アサド氏の処遇を話し合う和平協議は宙に浮いたままだ。

 化学兵器を用いて自国民を攻撃したアサド氏が権力の座にとどまるシナリオが濃厚になれば、反体制派は米国との協力の解消に動く可能性もある。一部は過激化し、かえってテロ組織を勢いづける懸念もある。