今日のニュース

気になったニュース

英なきEU、移民・対テロ結束探る 半年間の行程表

f:id:obaco:20160918025754j:image

EUサミット後、記者会見する欧州連合(EU)のトゥスク大統領(左)とユンケル欧州委員長(16日、ブラチスラバ)=ロイター

 【ブラチスラバ森本学欧州連合(EU)は16日、スロバキアの首都ブラチスラバで開いた英国を除く27カ国の非公式首脳会合で、今後半年間に最優先で取り組む政策課題をまとめた「行程表」を採択した。英国のEU離脱決定の背景に、移民・難民問題やテロ対策で有効策を打ち出せていないEUへの不信があるとの危機感がにじむ。具体的な実績をあげ、EU市民からの信頼回復を狙うが、加盟国の温度差も浮上しており、道のりは険しそうだ。

 「今の欧州政治の根本原因について率直な議論を交わすことができた」。EUのトゥスク大統領は会合終了後の記者会見で、英国のEU離脱決定をもたらした根本原因は、(1)移民・難民の無秩序な流入(2)テロや安全保障上のリスクの高まり(3)グローバル化がもたらす副作用――を巡るEU市民の不安に、EUがこたえられていないことだとの見方を示した。

 会合ではEU市民の信頼回復を目的に、英を除く27カ国が今後半年間で優先的に取り組む改善策の「行程表」をまとめた。移民・難民対策として、2015年秋以降の無秩序な難民らの流入の再発阻止を宣言。10月発足予定の「欧州国境・沿岸警備隊」を年内に完全稼働させると約束した。

 テロ・安保分野では、12月の首脳会議でEU域内の防衛協力拡大に向けた具体策を決めると明記。域内で広がる反グローバル化の機運への対抗策は、10月の次回首脳会議で自由貿易に対するEU市民の不安解消策を反映した通商政策の改革案を提示する方針を掲げた。

 27カ国は行程表を約束通り実行することで、欧州統合の「恩恵」を改めてEU市民に実感してもらい、EUの信認回復につなげたい考え。さらに来年3月にEU発足の起点となった「ローマ条約」調印から60周年を迎えるのを記念してローマで開く首脳会議で、英離脱後のEU将来像を打ち出し、英離脱がもたらした欧州統合への遠心力に歯止めを掛ける狙いだ。

 ただ「行程表」は27カ国の結束アピールを優先し、EU域内を深く分断する重要課題を避けた。ギリシャやイタリアなど南欧諸国が求める財政緊縮路線の見直しや、ハンガリーなど中東欧が反発するシリア難民らのEU加盟国による分担受け入れ策などだ。

 「EUの難民政策は誤り。EU関係者らは世間知らずだ」。ハンガリーのオルバン首相は会合後の記者会見で、中東欧が求めるEUの難民分担策の撤回が受け入れられなかったことに不満をぶつけた。イタリアのレンツィ首相も「満足していない」と、結束アピールに躍起なEU首脳や独仏に異論を唱えた。

 難民・移民問題を巡っては、無秩序な流入の再発不安に直面するバルカン半島諸国と独やオーストリアなど周辺国が24日、ウィーンでミニ首脳会議を開き、連携策を協議する。オルバン氏は16日、同会議で改めてEUの難民対策の抜本見直しを協議するよう訴えた。

 23日には英国がEU離脱を決めた国民投票から3カ月を迎える。英国のメイ首相はEU離脱交渉の開始時期について「来年1~2月になりそう」との見通しをトゥスク氏に伝えていたことが明らかになったが、まだ英の離脱戦略は骨格すら曖昧なままだ。

 EUはEU各国からの移民流入に英が制限をかけるならば、関税撤廃など欧州単一市場の恩恵は与えないとの立場を崩していない。16日の記者会見で、ユンケル欧州委員長は「妥協の可能性はまったく見いだせない」と英国を突き放した。

2016/9/18 0:37    日経新聞