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「手を返して…」 奈良の妖怪伝承、ネット新聞で紹介

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奈良妖怪新聞の創刊号

 「砂かけばばの実態に迫る」「河童(かっぱ) 奈良から全国へ」――。そんな見出しが躍るネット新聞「奈良妖怪新聞」が今春から月に1回、発行されている。筆者は木下昌美さん(28)。「妖怪話って、人が生きてきた証しのようなもの。消える前に、貴重な言い伝えを救いたい」と奈良の各地で逸話を集めている。

 つい6~7年前まで製造されていた薬草がある。木下さんは奈良県の旧大塔村(現・五條市)で業者を探し出し、この業者の亡き祖父が残した薬草と河童にまつわるメモを見つけた。

 メモによると、僧侶の家の便所から出てくる手を切り取り天井に投げたら、娘が女中に雇ってくれとやってきた。娘は3年ほど働いて「給金はいらないから手を返してくれ」と求め、薬草について教えて姿を消した。その後、僧侶が売り出した薬はよく売れた……。

 新聞では、こうした伝承などを紹介している。言い伝えをだれがどのように残してきたのかに興味があるといい、「日本人が持ち続けてきた、見えないものや自然に対する畏怖(いふ)が見える。だからおもしろい」と木下さん。

 ログイン前の続き福岡県出身。小学生のころ、図書館で水木しげるの自伝的漫画に出会い、妖怪や霊に詳しい登場人物「のんのんばあ」に憧れた。

 高校1年の進路相談で「大学でお化けの研究をしたい」と言って担任を驚かせた。同志社女子大から奈良女子大大学院に進学。鬼や妖怪が数多く登場する「今昔物語」「日本霊異記」などを研究し、「遠野物語」で有名な岩手県遠野市にも調査に行った。

 大学院修了後、奈良日日新聞の記者として奈良に残り、伝承を集めてきた。様々な講演に呼ばれるようになり、昨夏から記者をやめて「お化け活動」に本腰を入れた。名刺には「妖怪文化研究家」と刷る。

 奈良は妖怪にまつわる言い伝えを語れるお年寄りが多く、掘り起こして記録に残したいという。「そういうお話こそ、日本人の根っこのようなものを考える上で大事だと思う」

 奈良妖怪新聞は毎月第1月曜日に発行。地域メディア「大和政経通信社」(奈良市)のホームページ(http://yamatoseikei.theshop.jp/別ウインドウで開きます)から購読できる。1部540円。(宮崎亮)

2016年8月24日17時33分 朝日新聞デジタル