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「視覚障害者の甲子園」最後の夏 選手が不足、休止へ

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投球練習をする山下恵君=高松市扇町2丁目

 「視覚障害者甲子園」と呼ばれる全国盲学校野球大会が24日、北海道で開幕する。グランドソフトボールの全国大会で1951年に始まり、一時中断していたが今年が31回目。だが、選手不足などから今回を最後に休止が決まっている。

 主催する全国盲学校体育連盟によると、盲学校へ通う生徒が減少し、1チーム10人の選手を集めるのが難しい盲学校が増えたという。このため、野球大会の存続が難しくなり休止が決まった。

 ログイン前の続き一方で、2020年の東京パラリンピックに向け、障害者スポーツが盛んに行われていることをアピールしようと、来年以降は、チームの編成人数が少ない野球以外の種目などで、全国の盲学校が集うスポーツ大会を開催する。

■幼なじみに誓う全国制覇

 香川県盲学校岡山県立岡山盲学校の連合チームのエースとして出場する香川県立盲の山下恵君(17)。幼なじみが逃した全国優勝の夢を、自分が果たそうと意気込んでいる。

 今月19日、高松市香川県盲学校のグラウンドに大会を目前に練習する山下君の姿があった。キャッチャー役の教諭が手をたたく音に向け、山下君が下手から勢いよく球を転がす。「インいっぱい、ナイスボール!」。次々とストライクコースに決まる。宮本格孝監督(49)は、「抜群の制球力と3種類の変化球が山下の武器」と話す。優勝のためには、山下君の好投が欠かせない。

 山下君は生まれつき目が見えない。地元の小学校に通っていた3年生の時、同じクラスになったのが、今春の選抜で準優勝した高松商でエースを務めた浦大輝君(17)だった。

 「話が合う」という2人は放課後キャッチボールをするようになった。浦君が「こっち」と呼ぶ方向に山下君がボールを投げ、浦君は山下君に転がして返す。小学校を卒業するまで、2人はこうして遊んだ。

 小学校卒業後、山下君は香川県盲学校に進んだ。グランドソフトボールに取り組み、エースになった。悩んだときには、読み上げ機能を使い、通信アプリLINE(ライン)で浦君に相談した。「守備を信頼して打たせればいい」。アドバイスを自分のプレーに反映させた。

 浦君は、今春、高松商のエースとして選抜大会に出場した。山下君は、「友達がプレーする雰囲気を生で味わってみたい」と、準々決勝の海星(長崎)戦を甲子園で観戦。ラジオ中継を聞きながら感じる大歓声の迫力に感動した。試合後メッセージを送り合った。「お疲れ すごかったぞ」「ありがとう 次も頑張るわ」。高松商は次の準決勝も勝ち、選抜大会で準優勝した。

 7月、山下君が出場する地方大会前、浦君は「がんばれ 全国行けよ」と励ました。山下君はリーグ戦4試合中2試合で完投。チームを全国大会出場に導いた。一方で高松商は香川大会決勝で敗れ、夏の甲子園出場は果たせなかった。

 全国大会に臨む山下君に、浦君は「同じ『野球』をしているのはうれしい。優勝してくれると思う」とエールを送る。山下君は「浦が甲子園に行けなかった分まで頑張る。目標は優勝」と話している。(石田貴子)

     ◇

 〈グランドソフトボール〉 全盲弱視の選手による10人制で、4人以上が全盲選手、投手は全盲選手という決まりがある。ハンドボールに似た球を投手が転がし、打者はバットで打つ。基本的なルールは野球やソフトボールと同じ。飛球かゴロかに関わらず全盲守備者が捕球すれば打者はアウト。弱視守備者やベンチから打球の方向を指示することはできないため、全盲守備者は球が転がる音だけを頼りに捕球する。

2016年8月23日21時54分 朝日新聞デジタル