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その人の人生があったはず 相模原殺傷、耐えぬ献花

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車いすで献花台を訪れ、手を合わせる人=29日夕、相模原市緑区、角野貴之撮影

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、献花のために園を訪れる人が絶えない。障害のある人、その家族、元職員。差別に怒り、犠牲者の無念に思いをはせ、花を手向けている。

 「事件をニュースで見て、心にドンと重いものが来た。悲しみと不安で、昨日は眠れなかった」。右腕に先天性の障害がある東京都中央区の田生(たのう)雅之さん(26)は29日、電車とバスを乗り継いで園まで来た。

 幼少期に別の障害者施設に入所し、知的障害のある子どもたちと一緒に生活した。逮捕された容疑者の障害者に対する差別的な言動を知り「ぼく自身も否定されたように感じて、とても嫌な気分になった」。献花台に20秒ほど手を合わせ「安らかに眠ってほしいと祈りを捧げた。自分の心も、少しは落ち着きました」と語った。

2016年7月30日07時22分 朝日新聞デジタル

 

 

被害者の匿名、障害者や関係者どう思う? 事件に寄せて

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三宅浩子さん

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、神奈川県警は犠牲者やけが人の氏名を公表していない。被害者の姿が見えにくい事件に、各地の障害者らの思いも揺れる。

 私は三宅浩子です。46歳です。知的障害者です。横浜市グループホームに住んで、作業所でお豆腐の製造と販売をしています。

 「障害者なんていなくなればいい」という言葉はひどい。同じ障害のある仲間が「同じ考えの人が僕を探しにくるんじゃないか」と言っているのを聞いて、怖くなりました。みんな怖がっています。

 私には将来の目標があります。手話を勉強して、資格をとることです。楽しみは、Hey!Say!JUMPのコンサートに行くことです。だから殺された人たちにも、障害があっても、目標や楽しみがあったと思うんです。こんな人たちがいたんだ、ということを知ってもらうためにも、名前や顔を出してもらいたいと思います。

 でも、障害は社会に理解されていません。私は話もできるし、見た目も健常者と変わりません。だけど計算が苦手で、豆腐屋で1万円を出されると困ってしまいます。おつりの計算に時間がかかると、お客さんに大きな声で「早くしろよ」と言われます。ご飯も食べられないくらい落ち込みます。障害のためにできないことがあるのに、それを理解してもらえません。

 事件の被害者の家族もきっと今までたくさんの差別や偏見に苦しんできたと思います。障害が社会に理解されないまま障害者の名前や顔が出ても、その人たちが正しく理解されるとは思えない。きっと家族はそんな差別や偏見から子どもを守りたいんだと思います。私の両親も私の障害を周囲に理解してもらおうと、いつも頑張っていました。

 私は今回、名前も顔も新聞に掲載してもらうことにしました。自分で決めました。私の顔を見て、世の中の人に障害者を理解してもらいたいと思ったからです。障害者にも意思はあります。

     ◇

知的障害者が働く作業所などを運営する社会福祉法人「夢21福祉会」の常務理事、岩山みどりさん(57)

 3年ほど前、作業所近くの商店街で芸能人がテレビ番組の撮影をしていたので、利用者さんたちと見にいきました。私たちもテレビに映って、みんな放送日を心待ちにしていました。でも、放送ではダウン症の利用者さんにモザイクがかけられていました。配慮されたということなのかもしれませんが、障害者の存在を消されてしまったようで、とても悔しく、悲しい気持ちになりました。本人には放送日を言えませんでした。

 利用者さんたちは、皆さん成人された大人です。それぞれに意思があります。だから自分の名前や顔、障害のことを公表するかどうかは、それぞれの意思を尊重したいと思います。ただ、保護者にも必ず確認を取ります。本人の意思に反して、保護者が反対することがあるからです。本人の意思を尊重したいと言いながら、障害者は自立が難しく、家族の支援が不可欠なので、保護者の意向を無視できない。葛藤はいつも抱えています。

 障害に対する考え方、受け止め方は保護者の世代や環境によって大きく異なります。年配の人たちは、差別や偏見にさらされたという思いが強い。私には計り知れないつらい経験をされていると思うと、子どもを守りたいという保護者の気持ちも大事にしたいと思います。(聞き手・斉藤寛子)

2016年7月30日05時03分 朝日新聞デジタル

 

 

差別や偏見に苦しんだ、それでも 相模原殺傷、匿名葛藤

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2009年9月の交流食事会での森さん一家。手前左から、母悦子さん、真吾さん。後ろが父の正英さん=悦子さん提供(画像の一部を修整しています)

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、神奈川県警は犠牲者やけが人の氏名を公表していない。当事者たちの思いは複雑だ。

 胸を刺されて入院中の森真吾さん(51)の母の悦子さん(79)=相模原市緑区=は、津久井やまゆり園で16年前に開かれた運動会で笑顔を見せる真吾さんの写真を取り出した。「これ、よく見て下さい。うちの真吾です、かわいいでしょう」

 真吾さんは一時意識不明になった。29日も入院中だが、手を握ると握り返すほどに回復してきたという。

 園に入って約20年。重い障害があり、言葉を発することが困難だ。これまで、近所の人や親戚にもほとんど伝えずにいた。

 それが事件で変わった。

 事件当日、園を訪れた際に父の正英さん(82)の姿がテレビに映った。翌27日の朝日新聞の取材では名を伏せるよう求め、匿名で報じられた。報道で気付いた親戚などから、安否を案じる電話が入り始めた。他メディアの取材に実名で応じると、色々な所から連絡があった。「これまで家族で十分愛し合って、ひっそり生きてきた。事件で急に表舞台に引っ張り出された」

 一人ひとりの声を聞くうちに、「息子が生きていてくれただけでいい。恥ずかしいなんて言っていられない。隠してもいられない」と思うようになった。29日の朝日新聞の再度の取材に実名を承諾し、写真も提供した。

2016年7月30日05時02分 朝日新聞デジタル