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天皇陛下82歳、休日ほぼない日常 「執務」昨年1千件

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天皇陛下のある1週間の活動

 天皇陛下が周囲に「生前退位」の意向を示した背景には多忙を極める日常がある。82歳の今も公務や宮中祭祀(さいし)が続き、完全な休日はほとんどない。宮内庁も負担軽減を検討してきたが進んでいない。これだけ公務が多いわけは。なぜ減らせないのか。現状を探った。

 天皇の仕事は大きく三つに分類される。①憲法に定められた「国事行為」②式典や行事への出席などの「公的行為」③プライベートな外出や宮中祭祀といった「私的行為」。宮内庁は①と②を「公務」と位置づけるが、明確な定義があるわけではない。

 国事行為には国会召集や法律公布などがあるが、大きな割合を占めるのが、内閣から届く書類を決裁する「執務」だ。昨年は約1千件あったが、陛下は一つひとつ内容を理解したうえで署名・押印するという。地方訪問中や静養中にも書類が届けられ、休むことはない。

 また、こうした国事行為以外の「公的行為」も負担は小さくない。新年行事に始まり、春秋の園遊会国賓の歓迎行事に加え、勲章受章者らから皇居であいさつを受ける「拝謁(はいえつ)」は年間約100回。国民体育大会全国植樹祭などの地方訪問も多く、昨年は静養を除き15県29市11町に及んだ。

 宮内庁が陛下の74歳当時(2008年)の1年間の公務と、昭和天皇の同年齢時(1975年)とを比べたところ、外国賓客や駐日大使らとの会見は1・6倍、外国に赴任する大使らとの面会は4・6倍。地方などへの訪問は2・3倍だった。

■「象徴」としてのあり方を追求

 ログイン前の続きなぜ両陛下の公務は膨大なのか。要因の一つが、天皇陛下が求めてきた「象徴」としてのあり方だ。例えば、自然災害の被災地見舞いなど立場の弱い人たちに思いを寄せ続けてきた。「天皇の務めを体現しようとされた結果、お出ましが増えていった面はあるだろう」と宮内庁幹部は話す。

 天皇陛下が皇太子時代から長年続けてきた公務も少なくない。各自治体で回り持ちで行われている「全国豊かな海づくり大会」などは、皇太子時代から出席し、いまも続く。関係者によると、公務軽減を検討する中で、これらの公務については皇太子ご夫妻ら次世代に引き継ぐ案もあったが、両陛下は納得しなかったという。

 宮内庁側は式典や行事の内容や日程を検討し、両陛下の意向も踏まえて調整を進めているが、なかなか減らせないでいる。「公的行事の場合、公平の原則を踏まえてしなければならないので、十分に考えてしなくてはいけません」。天皇陛下は2012年の会見で負担軽減についての考えを問われ、そうこたえている。(島康彦、多田晃子)

憲法との関係 続く議論

 天皇が様々な公的行為を担うことについては戦後、憲法との関係で議論が重ねられてきた。焦点は政治性だ。

 天皇国事行為のみを行い、国政の権能を有しない、と憲法は定める。政府は、公的行為も公務として認めうるとの立場だ。

 公的行為の一つ、国会の開会式での「おことば」をめぐっては、1951年にサンフランシスコ講和条約が調印された直後の国会で批判が上がった。条約の結び方について当時世論の賛否が分かれていたにもかかわらず、調印されたことを「喜びに堪えない」と歓迎する文言があり、「天皇の政治運動」だと批判された。

 60年代の国会では、同じく公的行為である天皇の外国訪問について、行き先や時期が「時の政府の意図」で決められてしまう問題が指摘された。昭和天皇の初の米国訪問(75年)の際には、政治的な意味を帯びやすい外国訪問は「憲法の条文を事実上空文化する」との批判も出た。

 憲法天皇制の関係に詳しい横田耕一・九大名誉教授は、戦後に公的行為が拡大した背景に「できるだけ戦前の天皇の姿を残そうとの意識が働いていた」とみる。天皇の言動を「ありがたがる」国民意識も拡大を支えたという。今回の「生前退位」発言を機に「天皇の公務とは何なのか。憲法の原点に返って議論すべきだ」と語る。(編集委員塩倉裕

2016年7月21日07時12分 朝日新聞デジタル